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日本スウェーデン歯科学会が発足

スウェーデンの歯科治療・予防を日本に普及させるための、日本スウェーデン歯科学会(JSDA)が発足した。会長はイエテボリ大学のピーター・リングストロム教授、副会長は同大のステファン・レンバート教授が務める。6月25日には第1回理事会が開かれ、スウェーデンスタイルの予防と治療に取り組む「スウェデンティスト」の認定や、最先端治療・機器の情報提供、スウェーデンの大学教授らに質問ができるQ&Aサイトの立ち上げなど、JSDAの方向性、活動の説明があった。

JSDA常任理事で評議会の事務局長も務める小野芳司氏(興学会理事長)は、学会設立の経緯について、「2017年にカリソルブ・ペリソルブ特別認定講習会を都内で開き、日本全国から1千人の先生が参加してくださった。翌年に大阪と東京で開いたイエテボリ大学スクーリングには、計2千人が参加し、需要の高さを実感した」と述べ、リングストロム教授とレンバート教授から毎年開催する体制づくりをしてはどうかと声掛けがあったと明かす。

学会では、イエテボリ大学が開発に携わった「カリソルブ」「ペリソルブ」を臨床に取り入れるなど、スウェーデンスタイルの予防、治療を理解して積極的に行う歯科医師、歯科衛生士の称号「スウェデンティスト」を認定していく。そのほか、学会会員(正・準会員)の特典では、「スウェーデンナショナルガイドラインの速報」「認定講習会・教育セミナー」「最先端治療・機器のユーザーレポート」「歯科商材の案内」を挙げる。

スウェーデンでは国家事業として10年に1度、歯科のガイドラインが改定される仕組みで、2021年改定の責任者をJSDA会長のリングストロム教授が担っていることもあり、会員にはガイドライン改定に関する速報と解説が配信されるという。

また、イエテボリ大学では、ヨーロッパの最先端治療・機器の臨床試験も多く手がけていることから、ヨーロッパで認証前後の治療・機器のユーザーレポートも配信する予定だ。イエテボリ大学に縁のある商品を特価で仕入れることも検討中とのこと。

正会員のみのサービスも、「現職スウェーデン大学教授・准教授への治療に関するQ&Aサイトの利用」「会員用ソフトでの『ニュース』『意識チェック』『コラム』『セミナー動画』『症例配信』などのコンテンツの充実」「患者説明用のホワイトボードアニメーションの使用」「学会ブランディングホームページへの歯科医師・医院名の掲載」「ホームページからの集患(スウェデンティース)会員募集」「マニュアル・契約書のダウンロードサービス」など多岐にわたる。

スウェーデンの歯科医師の8割が参加するイエテボリ会員制サイトは、悩みや質問を書き込むと、教授・准教授ら他の会員が回答してくれる仕組みがあるが、JSDAの会員も同サイトを共有して、Q&Aを活用できる環境を整える。会員制のソフトも開発しており、患者説明に使える動画、症例写真、ホワイトボードアニメーション、スタッフ向けの教材なども用意。各治療に合わせた契約書や、採用マニュアル、面接時のアンケート、評価マニュアル、入職マニュアル、雇用契約書、秘密保持契約書、保証人契約書、入職誓約書、トラブル時の和解書など中々自分で作成するのがわずらわしい書類のテンプレートもダウンロードできる。英語・中国語に対応した問診画面も使える。

10月13日にはJSDA主催でイエテボリ大学日本スクーリング「スウェーデンナショナルガイドラインに学ぶ歯科最前線」を都内で開催する予定で、非会員でもセミナーに参加する歯科医師と衛生士、全員が「スウェデンティスト」に認証される。

10月12日はウエルカムパーティー、10月14日には学会説明会と医院経営の専門家による「突き抜ける歯科経営」の講演が行われる。

松尾:
日本の歯科界を元気にする学会になることに期待しています。今年の1月に、歯周病菌の産生する酵素「ジンジパイン」が海馬に付着して、認知症の引き金になっている可能性が示唆されました。歯周病と糖尿病との関係は言うまでもありませんが、国が持続可能な社会保障制度を実現するために、認知症の予防を推進しようとしている中、スウェーデンスタイルの歯周病へのアプローチはとても大きな意味を持つと考えています。

小野:
リングストロム教授の研究テーマの一つに「歯科と認知症」「歯科と高齢社会」などもあるので、JSDAでも、日本で注目されている歯科と全身との関係の情報が得られると思います。

鴨井:
SRPと抗菌療法を同時に行える「ペリソルブ」は、ある程度のトレーニングをすれば誰もが一定の効果を得られるものですので、日本でももう少し脚光を浴びても良いと感じています。

朝波:
世界的な課題として、インプラント周囲炎が挙げられますが、実際に「ペリソルブ」を使ってみて、インプラント周囲炎の進行を止める効果を確認しました。今後、「ペリソルブ」がイエテボリ大学をはじめとするヨーロッパでどのように活用されるのか、このような機会に講習会に参加し確りとアンテナを張っておくことが大切だと思います。

前田:
医科でも口腔の重要性が脚光を浴びていますので、歯科からもっと情報を発信していってもよい時期と言えます。そのためにも、歯科の最先端とも言えるスウェーデンの情報を得る意味は大きいのではないでしょうか。

谷口:
スウェーデンを訪問した時、国民は歯科の健診が義務付けられており、それに反するとペナルティーが科せられる仕組みになっていました。診察券が一元化され、データを有効に活用することで、口腔健康管理によって医療費が確実に抑えられることを実証し、社会に反映していました。そのようなシステムがスウェーデンから日本に入ってくるのも遠い話では無いと思います。

小野:
JSDAでは、将来的には認定した国内のスウェデンティストの医院に行けば、誰もが、同様の治療・予防が受けられるシステムを構築し各医院の集患に寄与できればと考えています。一人でも多くの歯科医療従事者に、学会会員になっていただき、スウェデンティストを広めていきたいと思っています。

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